産地問屋が伝えたい、使いやすい茶碗の話

ご飯は、日本の食卓に欠かせない主食。
そのご飯を盛る茶碗は、料理の味を引き立て、日々の食事を支える器のひとつです。

私たちは岐阜県・美濃の地で、長年にわたり業務用の食器を飲食店やホテルなどに卸してきました。
プロの現場で選ばれる器は、見た目の美しさだけでなく、「毎日使ってもストレスがない」という実用性が重視されます。
今回は、そうした業務用の視点を活かしながら、家庭でも長く愛用できる“使いやすい茶碗”の選び方についてお話しします。

1. 持ちやすさの決め手は「ハマ(高台)」にあり

茶碗を手に取ったとき、まず感じるのが「持ちやすさ」です。
この持ちやすさを左右するのが、底にある“ハマ(高台)”の存在です。

最近は、デザイン重視でハマがないボウルのような形の茶碗もありますが、これらは指をかける部分がなく、胴を手で包み込むように持つ必要があるため、安定感に欠け、扱いづらさを感じることがあります。

それに対して、しっかりとハマがある茶碗は、ハマと縁に軽く指を添えるだけで自然に持ち上がり、無理な力を使わず安定して持つことができます。
所作も美しく見え、手になじむ安心感があります。

2. ご飯を引き立てるのは、シンプルな器

ご飯そのものの美しさを際立たせるには、主張しすぎないシンプルな茶碗が最適です。
白磁や自然な釉薬の風合いを生かした器、昔ながらの控えめな柄の茶碗は、料理全体と調和しやすく、毎日の食卓にもすっとなじみます。

一方で、流行のデザインや色味の強い器は、他のお皿とバランスを取りづらく、長く使い続けるのが難しいことが多いのも事実。
茶碗は食卓の「基本形」であるため、他の器とケンカしないことが大切です。
だからこそ、あえてシンプルを選ぶことが、見た目にも使い勝手にも“ちょうどよい”選択になるのです。

3. 軽さより“扱いやすさ”。無理に軽量である必要はありません

軽量な茶碗はたしかに便利ですが、“軽い=使いやすい”とは限りません。
形状が手にしっかりフィットしていれば、多少重さがあっても「重たい」と感じることはほとんどありません。

最近出回っている“超軽量茶碗”の中には、胴の部分を極端に薄くして軽さを出しているものもあります。
しかしこのような茶碗は、衝撃で最も薄い部分から割れやすいというリスクがあります。

その点、美濃のメーカーは軽さと丈夫さのバランスを熟知しており、安心して日常使いできる茶碗を丁寧に作っています。
一方、輸入品や産地が不明な製品の中には、原材料や焼成方法が不透明なまま製造されているものもあり、品質面での不安が残るケースもあります。

重さよりも大事なのは、「安心して、毎日使える器かどうか」。
それが、長く愛せる茶碗を選ぶうえでの本当の基準です。

4. 収納性は“ほどほど”でいい。重ねやすさにとらわれすぎない選び方を

茶碗はもともと、重ねて収納することを前提にした器ではありません。
手になじむ丸みをもたせた形状が多く、ハマで安定して積み重ねるのは構造上難しいことがほとんどです。

もちろん、「できるだけコンパクトに収納したい」というニーズがある場合は、業務用でよく使われる“平茶碗(中平)”と呼ばれる器を選ぶのも一つの方法です。
これはハマが高く、胴も直線的でスタッキング性に優れています。

ただしその分、普通の量のご飯を盛るためには直径が大きくなりがちで、家庭用の食器棚では場所を取ることも。
収納性にこだわりすぎるよりも、日常で扱いやすく、気持ちよく使える形を選ぶ方が結果的に満足度が高くなります。
収納は“ほどほど”で良い――それくらいの考え方が、ちょうどいいのです。

まとめ:暮らしに寄り添う、信頼できる器を選ぶ

茶碗は、単なる食器ではありません。
日々の食事に寄り添い、ご飯を美味しく、そして気持ちよくいただくための大切な道具です。

私たちは、美濃焼の産地問屋として、プロの現場で使われてきた知見を活かしながら、一般のご家庭にも“本当に使いやすい器”を届けたいと考えています。

見た目の派手さではなく、手に取ったときの安定感、他の器との調和、そして安心して使える品質。
そうした要素を大切に、毎日使いたくなる茶碗を選んでみてください。

 

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